2023年5月14日日曜日

 曇り時々雨の日曜日。鼻に出来物があって痛い。
 オンラインミーティングがある。いろいろ話す。相変わらずパソコンのカメラがダメでミーティング途中で落ちてしまう。このパソコンは買ってまだ半年なのだけれど、どういうことだ。
 論文を仕上げて送る。少し整えて読みやすくなったと思う
 ここ数日かけて久しぶりに読んでいた丸谷才一「横しぐれ」を読み終える。たぶん前は松山に縁のある日本文学の一つということで読んでいる。北村薫堀江敏幸、乗代雄介などによる文学好きの文学好きによる文学好きのための小説というものが今もあるけれど、本作もそういうものである。旧仮名で書かれているけれど、やはり戦前の小説ともまた異なった昭和後半らしさを感じさせる。本作の主人公は意識と無意識のはざまで形を取らずに漂っていた過去の秘密の一端を垣間見つつも、決してその全貌を知ろうとはしない。謎を謎のままに残しておく。本作は推理小説のような形式をとりつつも、推理小説にはならない。典型的な推理小説では探偵が謎をすべて解明しようとするが、本作の探偵役は謎を解けないし、解こうとしない。それは知ってはいけないことや知らない方が良いこと、そしてどうしてもわからないことにあふれる謎に満ちた現実の私たちの生活と全く同様である。謎に満ちた現実を離れて謎の解明という夢を見せる物語が推理小説であり、謎に満ちた現実を踏まえて、謎を抱えながら生きるという現実を突きつける物語が丸谷才一「横しぐれ」なのだ。

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