2024年4月29日月曜日昭和の日

 曇りから雨の月曜日。

 間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』最近の話題作。2024年を代表する作品の一つになると思う。各所で絶賛されているらしいのもよくわかる。全体としては良い作品なのだけれど、SF小説と純文学の間でどっちつかずな印象を受ける作品でもあり、そこが少し難しかった。SF小説として読むにはSF的作りこみが甘く、しかし純文学として評価されるにはキャラクター造形や展開が少し型にはまりすぎているので清新さに欠けるところがあり、そういう点で微妙に物足りなさを感じる。全体的に2024年の空気感を見事に反映していると思うけれど、それゆえに独創性や時代を越えた普遍性に至るにはまだあともう一歩ほしいかなと思った。とはいえそれは新人デビュー作に求めるものではない。そもそもこの作品は新人デビュー作としては非常に高いクオリティで、だからこそ求めすぎてしまう。三島賞候補になるのも、少し意外だったけれど、わかる。最近はSFと純文学の両方で活躍して芥川賞を取るのか直木賞を取るのか、どっちが先かみたいな小説家も何人もいらっしゃるし、この作者もそうなっていくのではないかと思う。

 お土産で買ってきたショートブレッドがおいしい。こんなにおいしいのならもっと買ってくればよかった。

www.hayakawa-online.co.jp