2024年3月6日水曜日

 曇りの水曜日。寒い。

 仕事をしたら夕方には眠くなった。あまり体力が続かない。

 出隆の自伝にはたまに和辻哲郎が出てくるのだけれど、売れっ子学者としてではなく、たいていは大学で苦戦する人として語られる。大学時代の同級生は優秀なお金持ちの「紀尾井町の連中*1」こと岩下壮一と九鬼周造でとてもかなわないと思わされ、若手時代は藤岡事件の発端となる論文を発表して大騒動を引き起こし、京大に着任するときは日本史の研究者などからかなり多くの反対票を入れられ、留学中はホームシックになる。京大から東京大学倫理学の教授になったときも、実際は給料が二級も下がるうえに名誉教授の称号がもらえなくなるという「左遷的転任」で、しかもそもそも倫理学研究室出身ではないから肩身の狭い思いをする、などなど。しかし東大に着任した直後に、出に自家用の特製の立派な原稿用紙をどっさりプレゼントして博論執筆を促したたいった気前のいいエピソードもある。しかしさまざまな苦労の中で大著『倫理学』は執筆されたのだな。

*1:二人とも紀尾井町の大邸宅に住んでいたため