2023年6月28日水曜日

 曇りの水曜日。天気予報によるとあと1時間後、ちょうど出かけないといけない時間帯ににわか雨が来るとの由。しかし空には青空も見えていて、本当かなと思ったら30分後には雷鳴のとどろく激しい横殴りの雨になっていた。でも本当に激しい雨が降ったのはほんの少しだけ。僕が出かける時には雨は少し落ち着いていて、傘を差せば問題なかった。マンホールから水が溢れていた。一瞬だけの激しい雨だった。
 帰る頃には雨はあがっていた。泥まみれになりながらラグビーをする若者たちを横目に、雨上がりのぬれた道を帰る。途中でパン屋に寄ってクイニー・アマンみたいな甘いパン(正確な名前は忘れた)とパン・ド・ミを買って帰る。ここのパンはおいしい。
 梨木香歩『やがて満ちてくる光の』を読み終える。梨木さんは自然を愛し、宗教に惹かれ、しばしばあちら側を眺めるけれど、完全に行ってしまうことはなく、畏敬の念とともにこちら側に残る。これは収録されたエッセイの中では「家の渡り」などによく現れていると思う。まっすぐな真摯さを持って自然と宗教に向き合ったとき、人は一心不乱に突き進むのではなく、むしろ境界での揺蕩いに行きつくのかもしれない。揺蕩いの場は、自然と文化の両方がそこにある豊かな庭を備えた家であると、本書は示している
 家を出て宗教や自然に入っていく人は、また別種のまっすぐな真摯さを持っているのだろう。今昔物語集巻十九「讃岐国多度郡五位聞法即出家語 第十四」やそれを翻案した芥川龍之介の「往生絵巻」みたいなものになるのだろう。芥川は29歳で「往生絵巻」を、30歳で「六の宮の姫君」を発表する。「一心不乱に阿弥陀仏を追い求めて往生する五位の入道」と「一心不乱に仏名を御唱えられないので極楽にも地獄にも行けない姫君」の両方を描いた芥川は「ぼんやりした不安」を理由として35歳で自殺する。現代では一心不乱」とは別の仕方で真摯に自然や宗教と向き合う道が様々に示されている。それは良いことだと思う。

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