2023年6月2日金曜日

 大雨の金曜日。昼までは良く降っていたけれど夜には落ち着いてた。昨日NHK MUSIC SPECIALで椎名林檎の歌う「命の息吹き」を聞いて良かったので林原めぐみバージョンをクルクルと聞き続ける。「命の息吹き」なんて大きなタイトルで、それで良い曲なんだから凄まじい。過去・現在・未来とか幸せとか不幸とかそういったものに分化する前にある命の根源としての「いま」における邂逅「として」の歌を椎名林檎は作る。邂逅「を」歌うのではなく邂逅「として」歌い「まちがへないで・・こ々がいま」と歌うのはあまりに強靭で、これが「凄み」かと思わされる。
 過去・現在・未来が収れんする、幸・不幸(ここが善悪でなく幸・不幸なのはとても現代的だと思う)が分離する以前の「いま」を表現する椎名林檎はとても日本的だと思う。彼女の作る音楽は近代日本を良い点も悪い点もひっくるめて全部背負っていくので(時々一緒に歌っている宇多田ヒカルは逆にグローバルで、そのコントラストは面白い)、いいなと思うんだけど、少し引いてしまう。「命の息吹き」も同じ。クルクルと聞き続けるくらいには好きなんだけど、少し引いてしまう。
 研究対象を全力で好きな人もいる、というか人文系の研究者の多くはそうなんだと思うんだけど、僕はちょっと距離を取ってしまう。研究対象の良いところをひろいつつ悪いところは置いていきたいと思っているから、椎名林檎のような凄みはない。そういうものは全部ひっくるめて背負わないと出ない。だから凄みとは別の戦略を立てねばならない。
 雨がよく降る。そこら中水溜まりだらけになっている。見ると駐車場の低いところは水没している。
 村上先生と宮地尚子さんの対談本をようやく読み終える。何が面白いって話があまりかみ合っていなくて、読みながら『交わらないリズム: 出会いとすれ違いの現象学』という村上先生の論文集のタイトルが自然と思い出されること。ここまで「交わらないリズム」をやっているのにちゃんと面白い議論をキラキラと散らした一冊の本になってしまうのだから、力のある人たちはすごい。リズムが合っているかが些細な問題となるような会話があるんですね。個人的には村上先生がレヴィナスの話を長めにしていたり九鬼の話をしている点には目が留まりました。九鬼が「せっかく生まれたんだったら頑張って生きよう」か「そういうもんだな、人生」か、どっちだったかについては、前者になると思う。『偶然性の問題』は頑張って生きることを主張するテキストでしょうし、九鬼のいろいろなテキストを見る限り、彼自身も研究や教育にかなり頑張る人でしょう。また変なことを言うようだけれど、「いき」は非常に「人工的」な態度で、裏に相当な訓練と努力を要するものでしょう。あたかも訓練も努力もしていないかのように振る舞いために全力で努力するといいますか、そういう類のものではないでしょうか。
 夜になって急に疲れが出る。しんど。

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